グレープフルーツと医薬品

掲載情報更新日:2023年5月9日

目次

Part.3グレープフルーツと相互作用を起こし得る医薬品、起こさない医薬品

「使用上の注意」や「用法・用量、服用した際の効能、副作用」など、医薬品を正しく使用する上で大切な情報を記載した文書が「添付文書」です。
国内で流通している処方薬の中で、「添付文書」の「相互作用」の欄にグレープフルーツの影響ありとの記載がある医薬品は約80種類あります。

主なものとしては、血圧を下げる「降圧薬」の一種である「カルシウム拮抗薬」といわれる医薬品群の一部が該当します。
また、動脈硬化性疾患の主要なリスク因子である「脂質異常症」において管理が重要な「LDLコレステロール」に対する薬物療法に使用される「〇〇〇スタチン」との名称を持つ複数の「スタチン系」医薬品の中にも、グレープフルーツとの相互作用を有する薬があります。

【イラスト】「添付文書」の記載事項

一方で、グレープフルーツの影響を受けない医薬品も存在します。
例えば、「降圧剤」には、「カルシウム拮抗薬」以外に「アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)」や「アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)」といった複数の種類の医薬品がありますが、これらARB や ACE阻害薬は、ごく一部を除きグレープフルーツの影響を受けません。
このように、同じ種類で同じような効果・効能を持つ医薬品(「同種・同効薬」といいます)でも相互採用の影響が無い、または軽微といわれるものも少なくありません。

さらに、小腸を経ずに体内に移行する薬、たとえば、静脈内に直接投与する「注射剤」や、肌に貼りそこから薬物を体内に送り込む「経皮吸収型製剤」は、グレープフルーツとの相互作用は生じません。

このように、同種・同効薬の中に相互作用の影響を受けない医薬品がいくつかある場合があり、患者の状況によっては医師の判断により薬を変更できる可能性もありますので、グレープフルーツの飲食を希望されお悩みの方は、医師や薬剤師に相談してみて下さい。

【イラスト】グレープフルーツとの相互作用の無い医薬品

このページのポイント

  • 「添付文書」にグレープフルーツの影響ありの記載がある医薬品は、国内で約80種類あるが、同種・同効薬の中には、「グレープフルーツの影響を受けない(相互作用が生じない)」ものも存在する。
  • 静脈内に直接投与する「注射剤」や、肌に貼りそこから薬物を体内に送り込む「経皮吸収型製剤」は、グレープフルーツとの相互作用は生じない。
  • 同種・同効薬に相互作用の影響を受けない医薬品がある場合は、患者の状況により医師の判断で薬を変更できる可能性がある。

[※ご注意]グレープフルーツと医薬品が起こし得る「相互作用による健康への影響」は、年齢や体質・体調など患者一人一人で異なります。自身で判断せずに診察や服薬指導の際に医師や薬剤師に確認して下さい。

■参考文献

  • 杉山正康(著, 編集). 新版 薬の相互作用としくみ. 日経BP, 2022;第2版, 820p.
  • 森本雍憲(監訳). 医薬品-食品相互作用ハンドブック. 丸善出版, 2011;第2版, 584p.
  • 堀美智子(監修, 編集). 医薬品・食品相互作用ハンドブック. じほう, 2006, 309p.
  • 大谷壽一(著). マンガでわかる薬物動態学. オーム社, 2021, 181p
  • 日本医師会 作成委員会(著). 超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き[4]脂質異常症. 日本医師会. 2020年, 11p.
  • 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会 (編集). 高血圧治療ガイドライン2019. ライフサイエンス出版, 2019, 304p.
  • 医療用医薬品 情報検索. “医薬品の添付文書”. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構.(参照2022-10-01).
  • 「健康食品」の安全性・有効性情報. “グレープフルーツと薬物の相互作用について (Ver.20090129)”. 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所.(参照2022-10-01).
  • 一般社団法人日本医療薬学会 お知らせ. “「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」の公表”. 一般社団法人日本医療薬学会 医療薬学学術第一小委員会.(参照2022-10-01).
  • ※コンテンツは、医師・薬剤師による監修を経て公開されています。
  • ※コンテンツに記載されている医薬品は、一般に「経口投与(口から飲む)の処方薬」を指します。